われわれはゆとりがあり、豊かで意義がある生活や人生を望んでいます。これを実現するためには直面するいろいろな問題を、効率よく処理し、また将来起こりうるリスクに対して適切な対応が必要です。つまり、私たちの生活は問題解決や意思決定の繰り返しであります。
さて問題解決の方法は多岐にわたります。経験から判断する、直感で処理する、専門家に相談する等様々な方法があります。しかし、社会が大きな変化に直面している今日、過去の知識や経験はあまり役に立ちません。
ところで、世の中には問題解決を他の人より賢く短時間で自信をもって行う人もいます。そこで、問題解決の上手な人とそうでない人との違いを明らかにし、上手な人の考え方を論理的で体系的な形に整理し、効率の良い訓練を通じて共有していただこうという仕事を私は展開しています。
この仕事を始めてから30数年になります。わが国は、知識を中心とした教育を重要視し、チームワークと相まって今日の社会を作ってきました。ところが急激に変化する社会の中で、自ら「考え」そして素早く「結論を出し」、「行動に移す」ことが重要になってきました。知識を「学ぶ」ことと、自分で「考える」ことの両方をバランスよく身につける必要があります。
ある辞書では「思考」について「問題や課題に出発し結論に至る観念の過程」と定義していましたが、この「結論」を導く出すための考え方のプロセスを、合理的な「思考ツール」として身につけることが、今日の日本人にとって必要なのです。
料理上手な人は料理を作る手順を一つのルールとして持っており、このルールを駆使して、効率よく料理を作り上げます。知的業務である問題解決についても、論理的な考え方のプロセスやルールを身につければ、どのような状況に出くわしても、賢明に処理することができます。
欧米ではこのクリティカル・シンキングを一般の教育の中で伝えています。私たち日本人が、世界社会においてさらに一層活躍し、評価を得ていくためには、このクリティカル・シンキングの能力を高めることが急務です。
私はこの考え方に立って、一層の努力を重ねていく所存です。今後、週一回のペースで身近なテーマに即して、論理的な思考方法について説明していきます。ご覧いただければ幸いです。