飯久保廣嗣 Blog

私には、日本人と、欧米人や一部のアジア人の議論の展開方法がこれほど違うものかと、思い知らされた経験があります。それは、私の母校(米デポー大学)で、意思決定に関する客員教授を引き受けたときのことです。

授業時間は110分。1日2コマ、週5回を4週間というハードなスケジュール。生徒は学部4年生16名。ご存知のように欧米では先生を交えた議論により授業が進行します。最初に先生はたたき台としてA4・1ページほどのケーススタディを提示し、それについて生徒間で議論をさせることから始めます。

そして、驚きの瞬間はケーススタディシートを配布したときに訪れました。16名は4名ずつ4グループに分かれていましたが、それぞれが申し合わせたように同じ作業を始めたのです。それは、このケーススタディをどのような「段取り(プロセス)」で討議するかについて、合意を得ることでした。

日本では、各自が勝手に発言し始めるのではないでしょうか。しかし、米国の学生の行動は全く異なるものでした。これが、クリティカルシンキング、物事をシステマチックに考えることの「原点」なのだと、しみじみと感じたのを今でも昨日のことのように覚えています。

企業の中でも、あるテーマに対し結論を出すための議論を交わすときには、結論に至る考え方の手順を事前に合意しておくことが求められます。こういった考え方は、ある程度訓練することで身に付けられるものでもあり、また、これからの産業人育成に欠かすことのできない、必須スキルと言えるでしょう。