今年のサミットで発生した問題の中に、中ロの台頭、そして日米同盟がもたらすこれからの変化があります。9月に誕生する新総理の方針によっては、日米同盟に若干の調整があるかもしれません。情報もなく外交問題のシロウトの私が意見を述べる資格はありません。ただ、今後の外交(外国交際)に対して一国民としての意見を発信したくなりました。
我国は確固たる理念と威信を確立し、複数の外交シナリオを作り、多様なコンティンジェンシーへの対応策を体系的に事前に準備しておく必要があるのです。相手から提示されたり要求を突きつけられてから、それらへの対応を考えることは非常に不利であると思うのです。外交に限らず一般的な交渉においても、起こりうる問題現象を事前に描く「想定力」が求められていると思います。
日本では、準備が万端であることが重要視されます。そして準備が万端であれば交渉は成功する、といった発想が多いのではないでしょうか。ところが、このような発想は、その時点で思考停止を引き起こすのです。これに対し、交渉の準備を万端にすることは必要ですが、「交渉が決裂する可能性もある」という発想をすれば、思考停止を起こすことなく、「想定力」を用いて起こりうる問題を想定し、対処する諸対策を発想することにつながるのではないでしょうか。
ここで述べた「想定力」という言葉は、私の友人が最近発案した造語です。この造語の展開が日本人の思考様式を改革する上において非常に重要だと思いました。なぜならば、想定力は将来についての現象や原因に係わる発想であり、このことを我々はあまり意識していなかったのではないかと思うからです。