最近の新聞では、ビジネスの世界のめまぐるしい変化を頻繁に伝えています。事業提携、新規事業参入、企業買収、組織の再編成、新規設備投資、新会社の設立など関連ニュースで紙面は溢れています。企業は企業活力の強化、事業規模の拡大などのために、積極的にこれらの施策を展開しているようです。
ただし、このような新しい行動を起こす場合には、いくつか重要なポイントを押さえる必要があると私は思います。
例えば、新規事業参入の場合、担当者は新規事業に関する調査や分析を実施し、その事業計画を策定するのが本質的なプロセスと考えがちです。しかし、新規事業を考える前に、「既存事業分野の強化」という選択肢もあることを忘れてはなりません。目的の本質は、「その企業の競争力を強化するための方策の策定」であり、必ずしも新規事業参入が最適な方法とは限らないからです。
このように発想すると、目的と方法の混同を避けることができます。結果として、対策への短絡思考に陥ることや経営資源を浪費することを防ぐことにつながります。
さらに、重要なポイントは実行段階にあります。日本では、計画が完成すると、即座に実行に移すといった傾向が見られます。しかし、ここにも落とし穴が潜んでいます。それは、関係者全員がこの計画の成功を過信し、発生するかもしれない問題や障害に対する思考を停止していることに気づいていないということです。以前にも触れたことがありますが、計画の策定には、発生する可能性のある問題を洗い出し、それらの影響を最小限に抑えるための対策を予め立てる「コンティンジェンシープランの策定」が不可欠です。
スピード感を持って新しい試みを推進することも重要ですが、こういった発想で、環境変化に対応した適切な判断業務――デシジョンメイキングを講じることも大切だと、私は思います。