10月初め、私自身が講師になり、久しぶりに海外でEM法の研修を実施しました。対象は、日系米国企業の米国人幹部クラス。そこで、講義に入る前にある参加者と雑談を交わす機会がありました。
その参加者は、日系企業への就職を決めた際に、自分の父親からあまりいい顔をされなかったそうです。父親は太平洋戦争の沖縄戦を経験した歴戦の勇士。残念なことに沖縄での戦いが終わると、日本文化や日本人の人間性に直接触れることなく、帰国してしまったとのことでした。日本に対する偏見は、そういったことが背景のようです。
沖縄戦を経験した米国人でも、逆に日本人と交流を深めることで、日本びいきになった人は少なくありません。私の友人でもある、著名なコンサルタントのジェームス・アベグレン氏や、元シンガポール米国大使のロバート・オアー氏などがその好例です。しかし、少数派ながらまだ、戦争が災いし、日本に対して友好的な考えを持たない米国人がいることを改めて認識させられました。
米国でさえこの状況ですから、アジアではもっと深刻な対日感情があることは想像に難くありません。感情はしこりとなり、なかなか取り除けないのが現実。それをベースに考えたり、行動していては、前進することは難しいでしょう。
私は、こうした現実を目の当たりにし、問題を解決するには、感情論と論理的なアプローチを分けることが、いかに大切かを再認識しました。そのためには、米国人も日本人も、そしてアジアの人々も、論理的な思考力を強化することが、ビジネス界においても、国と国同士の関係においても、必要不可欠なのです。
米国では、元々教育の場で熱心に訓練しています。また、最近では中国や韓国のエリートたちもこうした能力に磨きをかけているようです。一方で日本ではまだ不備が目立つのが現状。将来の日米間、アジア諸国との問題解決に支障をきたさないためにも、日本人の論理的な思考能力の強化が急務だと、改めて実感しました。