さて、今回も前回に引き続き、日系米国企業の研修で感じたことを話したいと思います。まず、米国人は講義が始まると、その内容と講師の能力を実に冷ややかに“値踏み”します。そこで価値が認められ、信頼関係が築ければ、発言したり、質問をするなど、積極的な受講態度が示されることになります。
反対に、信頼を失えば、退席するものも出ることになるでしょう。幸いにして私の場合は前者となりましたが、自分にとって有用か無用かの判断をシビアに下す姿勢には、米国人特有の気質を感じました。
ひとたび有用だと判断すると、現実の課題に積極的に適応させようとする、その意識の高さにも驚かされました。この日系米国企業の場合、営業組織の改革が当面の課題でしたが、その新しい組織案を構築するために、研修中に分析を進め、結論を導出。さらにそれを持ち帰ってブラッシュアップするために、作業過程が記されたシートをデジカメで記録写真を撮るなど、熱心な姿勢が見受けられました。
良いものは良いと率直に認め、すぐさま実践的に活用する米国人の貪欲さ、そして思考ツールの現実的な活かし方の上手さを見せ付けられたような気がしました。
しかし、一方で、論理的な思考能力は米国でも個人差があり、秀逸な人もいれば、それほど能力的の高くない人もいるということもわかりました。つまり、状況は日本の企業とそれほど変わらないということです。
学校教育でこの分野の力を鍛えられている分、米国人のほうにアドバンテージはありますが、それは決して縮めることができない差ではないと実感しました。今後、日本人もキャッチアップすることは十分可能――。そう感じられたことは、今回の米国での研修における私自身の収穫であり、より日本人の論理的な思考能力の強化に努めようと改めて肝に銘じました。