高齢化社会が進行する中、わが国の企業活力を維持するための不可欠なテーマは、40代、50代のマネージャークラスをいかに再活性するかです。現在、企業内では、様々な教育訓練が実施されています。その内容は、理念や思考技術といった普遍的なものから、製品・技術知識・技能、またリーダーシップを含む人間関係・コミュニケーション力、そして経営に関するコミットメントなどに大別できるでしょう。
ここでの問題として、ヒューマンリソース担当や経営企画担当責任者の中に、普遍的な領域の教育まで常に新しいものを導入するべきだという錯覚に陥っている方がいらっしゃるということが挙げられます。重要なことは、企業内教育により業績に結びつく成果を出すこと、すなわち、教育投資に対する効果が得られることです。
ただし、投資効果は、知識や技能関連は定量的に評価することが容易な一方、思考技術や理念に関する教育など普遍的な要素は定量的に把握することが一般的には困難です。定量的評価が得られるような方法や手段を模索し、実践することが求められます。
さて、次に今日の40代、50代のマネージャークラスの再活性においてこれから重要になるポイントを考えてみたいと思います。欧米はもとより中国や韓国のビジネス人と比較して、日本のマネージャーが欠けているものは、自分を突き動かす哲学・信念、そして人間としてのパワー(実行・遂行力)だと思います。
先日、かつて著名な投資家として世界の耳目を集めたジョージ・ソロス氏と、小規模な彼自身の出版記念パーティーで、直接立ち話をする機会がありました。私が、「あなたを動かしてきた信念・哲学は何か」と尋ねると、彼は「潤沢な資金を持ってフィランソロピー(財団活動)を展開すること」という答えが返ってきました。周知のごとく彼はユダヤ系ハンガリー人であり、その後英国移住、米国の市民権取得を経ながら、あれだけの財なした人であります。日本のビジネス人がこのようなビジョンを持つ必要はないにしても、自分なりの信念や哲学を持つことが、これからの企業活性化には必要であると改めて感じました。
しかし、信念・哲学だけでビジネスで成功するはできません。それに加えて、現在の日本のビジネス人が武装するべき発想は、自主防衛から脱皮し問題の本質に取り組む「傍観から行動へ」ではないでしょうか。つまり自主的にアクションを起こすマインドが必要なのです。このマインドを醸成するためには、確立された思考技術が不可欠となります。どのような発想で問題を発掘・処理するかという「考え方の段取り」が即座に組める思考技術が備われば、「傍観から行動へ」が実践できるようになり、それが人間としてのパワーにつながります。その点を考慮した、マネージャークラスの教育に取り組むことが必要だと思います。