日米平和条約と安全保障条約が1951年に締結されて、56年になります。その間、西洋社会のリーダーシップを執る米国と、非西洋社会で唯一先進経済国として存在してきた日本の間には多くの紆余曲折がありました。
また、最近では中国が経済面で飛躍的な発展を遂げ、その世界の中でのプレゼンスは日に日に高まっています。私はそれに比例して、日本の対米関係、つまり日米同盟の重要度も増していると思うのです。
何故なら、世界の関心は、今や大西洋を囲む諸国から、太平洋周辺諸国、いわゆるパシフィック・リムに移行しているからです。世界各国、とりわけアジア諸国は、日本が持つ、超大国アメリカとの長期的に安定した信頼関係、そして日米同盟関係の行方を注視しています。日本がパシフィック・リムのアジア側の主要国として、存在感や発言力を保っていくためには、この同盟関係が鍵となるのです。
仮に日本が日米同盟を軽視して、日中同盟、日露同盟に立場をシフトしていった場合、日本は実に中途半端な印象を与えることになります。中国、ロシアと同盟関係を結ぶことが非現実的であることは、火を見るよりも明らかです。アジアにおける日本の存在感は、日米同盟なくしてありえないと言っても過言ではないでしょう。これはアジア諸国に限ったことではなく、中国、ロシアもこの同盟のあり方に大きな関心を持っているのです。
今後はこの日米同盟のあり方にも改革が必要です。ひと昔前、ジャパンバッシングに日本中が騒然とした時代に、ワシントンでは「ガイアツ」という言葉がトレンドになっていました。日本は外国からの圧力「ガイアツ(外圧)」に弱い。ガイアツをかければ日本は動くというのが合言葉でした。日本側が自国制度の変革のために、アメリカから圧力をかけてもらうという話さえあったと聞きます。
また、マスメディアが新聞や雑誌で「日本の変革」、「日本企業のあるべき姿」を、海外の論客や経営者、有識者に「ご指導いただく」記事を目にすることがあります。例えば、日経ビジネスには、元IBM会長のルイス・ガースナー氏や前GE会長のジャック・ウェルチ氏に日本の経済や経営のあるべき姿を取材し、報道していました。逆の立場が考えられるでしょうか。例えば、米国のBusiness Week誌が、日本の優良企業の経営者に、自国の経営や経済のあり方を取材するという企画はまず考えられません。
このようなことを考えると、よく言われる米国に対する「追従」や「追随」の原因は、私たち日本人の発想にもあるのではないでしょうか。日本人の意識改革が必要であると同時に、外交(外国交際)に携わる関係者の方々にも「主体的な発想」を持っていただきたいものです。その上で日米同盟の将来的な構想を描くことが必要なのではないでしょうか。
ひと言で表現するならば、「NOと言える日本」から、「代替肢を提示し、説得できる日本」になってほしいと、私は考えます。