マスメディアや世間を騒がした参議院議員選挙が幕を閉じました。今回の結果は、日本の政局に大きな影響を与えることでしょう。しかし、私はそうした直近の事象ではなく、より本質的なことを考えたいと思います。それは、参議院が本来の機能を全うするために、何が必要かということです。
そのひとつとして取り上げたいのが、参議院議員に選出される「資格」です。日本の議会制民主主義のお手本はイギリスの2院制。イギリスは貴族院(House of Lords)、庶民院(House of Commons)で構成され、貴族院は名目的存在であるものの、高い審議水準を誇ることで尊敬を集め、庶民院に再考を促す機関として、広く存在意義を認められています。さらに、貴族院はSir(卿)の称号を持つ人たちで占められ、歳費は一切支給されていないそうです。また、2007年にブレア政権が貴族院の改革法案を提出するなど、貴族院本来の精神を伝承するための努力もなされています。
一方、日本の参議院は戦前、貴族院と呼ばれ、皇族議員、公・侯爵議員、伯・子・男爵議員、勅撰議員、帝国学士院会員議員、多額納税者議員などで構成されていました。1890年の第1回通常国会から1946年の第92回通常国会まで存続し、戦後は、それが参議院に移行しました。ただし、残念なことには日本はイギリスと違い、この貴族院の精神と伝統が、正しく継承されないまま、今日に至っています。
つまり、戦前の日本の貴族院も、現在のイギリスの貴族院も、議員になるためには、確固とした資格が必要。しかし、現状の参議院は、資格について全く規定がありません。「参議院不要論」などが起こるのは、そうした背景も一因になっていると考えられます。
日本の貴族院のうち、勅撰議員については、「国家に勲労ある者や学識のある満30歳以上の男子」という資格条件が明記されていました。今日、日本国民が参議院議員選挙に違和感を持つ原因のひとつは、こういった資格が規定されていないことも挙げられるでしょう。
日本の参議院が機能を果たすためには、イギリスの貴族院のように、「審議水準の高さ」や「尊敬を集めること」がカギとなります。これらの歴史や実態を踏まえて、2院制が機能するためには、どのような改革が必要か。「資格」を含めた議論が今こそ求められています。