先日の報道によると、一般消費者から1千億円前後を集めた健康関連商品販売会社が、詐欺事件として刑事告発されたとのことです。被害に遭った出資者はどのような発想で出資の判断をしているのでしょうか。多くの場合は、出資者を信用させるための巧妙な仕掛けや仕組みがあります。いわゆる著名人や親しい友人に薦められると、思考停止になり、自己判断を放棄する傾向が一部の日本人にはあります。このような状態に陥った人たちが被害者となっているようです。
では、被害に遭わないための処方箋はあるのでしょうか。ひと言で言えば、「主体的な判断で対応すること」。これに尽きると思います。
主体的な判断のために必要な発想は、リスクを起こり得る現実として想定することです。「この出資に同意したら、どのようなリスクがあるか」を自問自答し、思いつくままに列挙していきます。これは実際に紙などに書き、目で見える状態、いわゆる「見える化」することがポイントです。
例えば先の事件の場合、リスクの一つとして、「主体の会社が破綻するかもしれない」ことが挙げられます。次に「それが発生する確率(Probability)はどうか」を自問自答。判断の根拠が、著名人の利用や発言、友人の無責任な勧誘や進言に過ぎないのであれば、主体会社が破綻するというリスクは必然的に高くなります。
また、そのリスク(主体の会社が破綻する)がもし起きた時には、どのような「影響度」(Seriousness)が考えられるのか。最悪のシナリオを起こり得る現実として想定すれば、自ずと結論は出るのではないでしょうか。このようなリスクを他にも思いつくまま挙げて、自分なりに分析を試みることが大切です。
しかし、実際には、とっさにそのような判断ができないケースも多々あります。その場合の対応は、契約社会では常套句となっている、「専門家か弁護士と相談してから回答する」という言い方もあるでしょう。とにかく、「主体的に判断すること」、もしそれが難しい場合は、第三者に「客観的に判断してもらうこと」。この2つの処方箋があれば、詐欺もどきの犯罪に巻き込まれる可能性は格段に減ると思います。