12月10日の米メディアの報道によると、名門のニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団が、2008年2月に総勢250名の陣容で北朝鮮を訪問し、公演することが決まったそうである。
一般的な国際親善、国際相互理解の観点から見れば、これは大変結構なことである。しかし、拉致問題(誘惑犯罪)が未解決の日朝・朝日関係における日本の立場を考えると、手放しで賛辞を送るわけにはいかない。
米ホワイトハウスが、日本や日本人の立場を軽視し感情を逆撫でするような決定を、日本との協議なしに下したのであれば、日米同盟の一方の当事国の行動として、問題があると言えるのではないか。
また、もし日本側に事前の協議があったのであれば、日本の政府関係者がメディアに事前に発表し、遺憾の意を表明するべきであっただろう。これが対等な関係を維持するための基本的な対応ではないか。
健全で友好的な同盟関係には、対立と緊張も時には必要であることを認識したいものだ。また、その実態を情報収集・分析し、国民に開示するのが、メディアの役割のひとつである。
さらに、我々国民一人ひとりも、こうした真意が問われるような米国の行動に対して、敏感に反応し、傍観せずに積極的に意見を発信することが必要なのではないか。今回のニューヨークフィル公演が、米政府が日本に送るメッセージであるならば、我々はこれをどう解釈し、対応すべきか。手遅れにならないうちに真剣に考えたい。