飯久保廣嗣 Blog

国際社会における日本の国力低下が顕在化していることを、心ある国民は深刻に受け止めている。その一つは、国が直面する諸重要課題への問題解決や意思決定に、国際的な常識では考えられないほど時間がかかっていることである。諸外国からの不信の原因はこのような状況を放置している国民(mediaを含)の無関心な態度に対してではないだろうか。

この状況の背景の1つが、日本人の固有の「思考様式」にあると断言できる。それが今回の日銀総裁選出の混乱である。総裁代理という対応が国際的にどのように受け止められるかについて、そのマイナスを想定して頂きたい。代理が決ったからといって、海外の不信感が解決されるとは思えない。そこで、このことを考えてみたい。

まず、国際的にインパクトが大きい人選に関しては、当初の段階で複数の候補者を提示することが必要である。これは国際的な常識ではなかろうか。これに対して日本の現状は、特定候補Aを政争の具として扱い、合意がなされる可能性が低いにもかかわらず、「理解してほしい」という無理な願望を持って強引に提示している。

しかも、与党側の推薦する根拠は、抽象的で不明確であり、また野党も反対する根拠が明確に見えてこない。このようなことの繰り返しで、任期満了の直前になって、元大蔵事務次官を再提示した。この候補に野党は反発し、反対を表明。このような、不明瞭な腹の探り合いをいつまで続けるつもりなのだろうか。真の国益を関係者は認識して欲しい。

有効な解決策はない。しかし日本人の思考様式を若干でも合理的で筋が通るものにしようと考えることが肝要である。日本社会に通用する意思決定や問題解決の思考様式は国際社会では通用しないだけでなく、結果的に日本が孤立する危険があることを認識したい。
下記の考える段取りは現実的ではないかもしれないが、このような発想も場合によっては必要かもしれない。

①初期の段階で候補者を複数選ぶ。

②複数候補を判断するための基準を設定する。
ex.)「国益優先の判断ができること」、「金融政策に対する自分の思想、理念、信念を持っていること」、「国際金融畑での実績があること」、「国内外の人脈を持っている」など。

③これら項目に対して、各候補に関する情報を収集し、公表する。

④その結果、候補者が絞られ、暫定的な人選が決まる。

⑤最後のプロセスとして、政治的な決断を下す。(選出した場合のマイナスを含む)

合理的でシステマティックな思考様式を確立して関係者が認識することは、重要案件を審議する上で不可欠であろう。それは、意思決定の精度と効率に直接的に関係するからである。音楽の合奏には楽譜が必要である。意思決定にも考えるプロセスを関係者が共有することにより、問題から結論に至る過程が見えるようになるのではないだろうか。