日中の健全な関係の確立と維持は、国民の一大関心事である。ただし、日中関係は、安定した友好関係の連続とはなりえない。基本的な信頼関係を確立する過程において、意見の相違や緊張場面の発生は、起こりうることであり、避けては通れない道ではないか。
5月の胡錦濤中国国家主席の来日を絶対に成功させなければならない――。そういったことが政府や外務省の至上命題になっていると、国民は理解している。しかし、中国側が主導権を握り、日本側がそれに合わせるという図式が、国民の一般的なパーセプションのように思われるのは、不本意ではなかろうか。
そこで、素人である国民の一人が考えることは、日本側から主体的に、相手に対し、ボールを投げ、その反応を見ることが必要ということであり、それをぜひ実行していただきたい。具体的な行動を2つ提起する。
1つは、日本の国内政治状況の現状と混乱を理由に、胡錦濤国家主席の来日スケジュールの延期を打診することである。日本と中国との関係は非常に重要であるが、このような時期に来日され、失礼があってはならないし、真に申し訳ないが政局が安定した時点でお呼び致したい、と申し出ることは失礼にはあたらない。日本政府が難問山積の状況であることを中国も認識しているはずである。首脳の訪問を延期するという事例はいくらでもある。
もう1つは、チベット問題を受けた08-08-08の北京オリンピックへの対応である。日本が開会式に出席することが当然のような発想を、この際再考してみてはどうかと思う。これは相手にボールを投げることによって、日本が主導権を取ることにつながる。中国と友好関係を維持する姿勢に変わりはないものの、チベット問題を背景に、「オリンピック開会式への不参加を検討する」というメッセージを、相手側にぶつけるのである。
それに対して、中国側から「参加してほしい」と要請があり、それに対応するのであれば、日本の主体性の確立につながり、国際社会に対する日本のスタンスも示すことができる。
日本のメディアや有識者は、対米追従外交を批判してきた。このまま放置すると、対中追従外交になりかねない。そこで強調したいことは、相手にボールを投げて反応を見るという手法を確立することである。相手側の反応に対して、事前に複数のシナリオを用意しておくことはいうまでもない。政治においては野党もこのあたりの論点を持ってほしい。