日本では、外圧を背景に、さまざまな法律を作り、それを施行してきた。そのなかには、日本版SOX法、規制緩和(正確には規制撤廃―Deregulation)関連、後期高齢者医療制度、など各方面にわたる。その結果、国民生活に混乱を起こしているケースも少なくない
ではなぜこのような混乱が起こるのであろうか。原因は単純ではない。しかし、1ついえることは、霞ヶ関の優秀な官僚が知恵を出し策定した法律には、「表」があるのみで、「裏」がないということである。
「表」というのは、その法律の完璧さ、絶対性を追求することである。「裏」とは、その法律が実際に施行されたときに、どのような諸問題が発生するかを想定することである。
この「裏」を分析し、諸対策を織り込むことで、はじめて「表」を円滑な実施に繋げることになる。諸対策とは、将来の問題現象を想定し、それらの発生を防止する対策と、発生した場合の対応策である。要は表裏一体ということであり、日本の発想の欠点は「裏」への意識が薄いことなのである。
これでは、太平洋戦争突入前の日本の指導者の発想と同じではないだろうか。つまり、陸軍の参謀本部(今日で言えば、中央官庁)が絶対的な権力を持ち、その判断と決定は完璧であり、それにしたがって進めれば、国益が守られると信じていた、あの悪夢の二の舞になりかねない。その結果として国家の崩壊があったことを忘れてはならない。
これを改めて教訓にし、法律の立案に取り組んで頂きたい。そして、全ての法律は国益と
国民のWell Being(望ましい事、プラスである事)になり、実施した場合の「裏」の分析と対策を織り込む事によって施行上の問題発生への対応に万全を期して頂きたい。