日本社会が閉塞感に陥っている大きな背景の1つが、変化への対応が出来ていないということである。このことは、意思決定が遅い、リスク対応が甘い、議論(会議等)にムダがある、短絡思考である・・・などの現象に見られる。これにより、日本社会全体の競争力は著しく低下しているのである。
変化を先取りし、複数のシナリオ(最悪なものを含む)を想定することは、日本人の発想の中には、欠けている領域ではないだろうか。これについて、2000年に藤原繁士氏は次のように述べている。「あって欲しくない事は、あってはならないことであり、あってはならないことは、口にしてもいけないし、考えるなどはもってのほかである。だからそんな事実はないのだと言うような、思考停止・自己催眠は、現代を風靡する世界的傾向であるが、日本において最も顕著である」。
この状況は改善されているどころか、ますますひどい状況になっている。韓国や中国、台湾、シンガポールでも、これらの現象は見られるが、日本ほど、深刻ではない。将来の様々な現象を、いいことも、悪いことも含めて積極的に発想し、それらに適切な対応をあらかじめ講じておくという“想定力”を個人、組織、社会が強化することが、日本の閉塞状況を打破する1つの道になるのではないか。これは、かなり勇気を伴うことである。