これまでに私は日本の意思決定の精度について、意見を述べてきた。意思決定の迅速性に関しては、日本は改善の余地があると考える。一方で、米国の意思決定の精度(質)は、最近の金融市場の混乱を見ると、疑問を持たざるを得ない。つまり、これはグローバルな問題になってきているといえる。
その本質は、「意思決定の品質のマネジメントをどのようにコントロールしていくか」ということである。意思決定では「ある案件に対して複数の選択肢から最適な案を選ぶ」という冷静なアプローチが必要である。それにも関わらず、グローバルなイシューに対して、方法に短絡をする傾向がより強まっている。
これも、正確な情報にのっとった短絡ならば許されるのかもしれない。だが、不確定情報や捏造情報を基にした意思決定への短絡は大きな災いをもたらす。その例の1つが、ジョージ・W・ブッシュのイラク攻撃だろう。
場合によっては、経験やカンを基に即座に意思決定することも必要だが、その際には必ずマイナス要因の分析を怠らないことが条件となる。例えば、イラク攻撃では、「当時のホワイトハウスに入る情報が不正確だった場合のコンセクエンス」、「そのコンセクエンスからくるマイナス」、「軍隊を出動した場合の長期泥沼化の可能性」、「現地の対米感情の悪化の可能性」など、枚挙に暇はない。
このような発想でマイナス要因を分析していたならば、素人の意見ではあるが、別の選択肢があったのかもしれない。これが意思決定の品質のマネジメントの効果なのである。
わが国が国際社会において、イニシアチブを取る場面はあまり見られない。しかし、新総理が各国に対して独自の提案をする場合には、意思決定の品質のマネジメントを充分に考えてもらいたいものだ。