日本人や日本の組織が、論理思考をますます必要とする時代が、今後も続くことになる。なぜならば、日本の競争力は、意思決定の精度とスピードにリンクするからである。別の表現をするならば、日本の組織には「意思決定のコスト」をどのように削減すればよいかという、避けては通れない課題がある。
そこで、前回に言及した論理思考の“Why”について、さらに解説を進めたい。
ここでは、発生した問題現象の原因を究明する場合の論理的な思考手順を考えてみる。まず、いわれることは、「原因究明をする課題を明確にしろ」ということである。では、なぜこのことが論理思考で必要なのか。それは2つ考えられる。
1つは、発生している現象に対して収集する情報の範囲を限定することができるからである。問題分析において、情報が多いほどよいということは、実は正しくない。論理的に整理された次元で体系的に情報を収集するためには、分析課題が明確になっていなければならない。
2つ目は、個人やグループで分析業務をする場合に、当該課題に対して集中させることができるからである。また、分析や討議が脱線した場合、本論に立ち返らせるための、ガイドとしての役割も果たす。
ここで、分析課題が明確になり、次のステップとして、「情報を収集しろ」ということになる。情報収集の合理的な枠組みに関しては、別の機会に述べるとするが、なぜ情報を収集するのかという“Why”について、ここでは考えたい。それは、発生している現象について、抜けなく漏れなく説明するためである。
例えば、「A製品は半年前より首都圏の○○顧客から大量にクレームが出ている」では、現象を十分説明していることにはならない。首都圏のどの地域であるか、クレームの具体的な内容は何か、どのような状況で発生しているのか、このクレームの傾向はどうか、などの情報がなければ、現象の全体を説明しえない。
さらに、情報収集には重要なポイントがある。それは、B・C製品についてはどうか、首都圏で問題が起きてない地域はあるのか、発生していない状況はあるのか、他の顧客では問題はないのか、などの情報も収集しなければ、この“Why”に対しての解にはならないのである。