例外的な政治家を除いて、よく批判されるのが、政策策定や立法において、官僚主導型であるということである。これは現在の状況では致し方ないことかもしれない。なぜなら、制度上、内閣府に政策や立法を考える機関と能力がないためと思われる。
米国には独立した共和党系のハドソン研究所、民主党系のブルッキングス研究所があり、国の政策や法律について、戦略的な研究を進めている。わが国に、このような機関を早急に作り出すことは、困難である。そこで、現状を踏まえて諸議員が官僚と対峙し、政策論争を展開するときに、1つの有効な武器として挙げられるものが「質問力」ではなかろうか。
では、どのような質問形が考えられるか。下記に列挙する。これは、官僚が俎上にのせてくる政策や法律などの諸案件などの説明を受けた後で、それらを精査するために使える1つのツールとなり得るのではないだろうか。
1.実施した場合の工程表で、成功させるために、どの工程(諸重大領域)を注意する必要があるか。またどの工程に支障や問題が発生するのか。
2.それらの工程で具体的に起こるかもしれない計画からのズレや将来問題を想定すると、どうなるか。考えられる諸問題をすべて明確にせよ。
3.それらの将来問題(起こり得るリスク)を「発生する確率」と「起きた場合の重大性」で絞り込むとどうなるか。
4.それらの将来問題を引き起こす原因となるものはなにか(想定原因)。
5.この想定原因を取り除く対策(予防対策)にはどのくらいの予算が必要か。
6.将来問題発生時の事前の対策(コンティンジェンシー)にどのくらいの予算が必要か。
上記の質問形は、昔からの日本人の知恵にあるもので、西洋から学んだものではない。本質は、計画には2つの対策を織り込むことが重要であるということを示唆している。1つは予防対策であり、「発生するかもしれない問題の原因を除去する対策」のことである。そして、もう1つは、コンティンジェンシーであり、「発生したときの影響を最小化するために考えておく対策」のことである。
この2つの対策を予め策定することの重要性を、「備えあれば憂いなし」ということわざによって先達は教えているのである。重要なポイントは、いかに政策や法律が完璧に策定されていても、それを実施する際の問題点と対策を想定し、計画そのものに盛り込むことである。
政治家主導の政策立案を推進する場合、官僚に対し鋭い質問で対応するということが重要である。そのことが、より国益にかなった政策論争につながるのではないだろうか。